各界の第一線で活躍する著名人へのインタビューによる連載ページ“エドックス ラヴァーズ”。
プロフェッショナルな仕事へのこだわりや、彼らの愛用ウォッチなどに迫ります。
今月は“クルマの楽しさ・素晴らしさを多くの人に伝えたい”という強い思いから、精力的にプロモーション活動も行っているレーシングドライバーの脇阪 寿一氏です。
負けたくない、勝ちたいという気持ちから始まった
レーシングドライバーを目指されたきっかけは何ですか?
僕は奈良出身なのですが、幼い頃は豊かな自然に囲まれて育ちました。カブトムシを取りに行ったり、釣りをしに行ったりと毎日自然の中で遊んでいましたね。でも何をしに行くにしても歩くとすごく時間がかかるんですよ。でもたまに知り合いのおじさんが「どこいくんや??乗っけてってやる!!」と言って車で目的地に乗せて行ってくれることもあって…、当時から漠然と「車って便利だな、楽な乗り物なんだな」という思いはありました。成長するにつれて自転車に乗ったり、バイクに乗ったりと自分自身が便利な移動手段を手に入れていったわけですが、19歳のある時父親の知り合いがやっているカート屋さんから「カートに乗ってみないか?」と誘われて、はじめてレーシングカートに乗ってみたわけですよ。最初の頃からある程度、そこそこのタイムで乗ることは出来ましたが、小さい頃からやっている選手にはやっぱり勝てない。それが悔しくて「絶対勝ってやる!!」という思いだけでカート場に通い詰めるようになりました。レーシングドライバーを目指したきっかけと言えばこの「人に負けたくない。勝ちたい。」という気持ちかな。実はもともとはっきりと「レーシングドライバーになりたい」と思っていたわけでは無いんですよ。でもそうこうしてるうちにひとりひとりライバルを倒していけるようになり、やがて「地方選手権に出てみないか?」と。そこで成績を出すことによって、全日本選手権、さらに上のカテゴリーへと参戦させてもらえるようになって…、もちろん全てが順風満帆では無く、つらい事大変な事もたくさんありましたが、素晴らしい方々との巡り会わせによって、そして与えられたチャンスをしっかりとモノにする事によって、今の自分を築いてくる事ができました。
車を操るレーシングドライバーというアスリート
普段の生活で大事にしていること、意識していることはありますか?
カラダのメンテナンスですね。メンテナンスといっても、体調管理、食事管理、トレーニングと様々ですが、ひとつも疎かにすることは出来ません。トップコンディションを維持するためには若い頃と同じことをやっていてはダメなんですよ。もっと細かく自分自身のコンディションを把握し、良いところ・悪いところを明確にして、コンディションの維持に努める必要があります。僕は今年41歳になりましたが、そのおかげもあって今の自分のカラダは非常に充実してますね。レースって車が走るのになぜトレーニングする必要があるのか??と言う知り合いのアスリートもいますが、その車を操るのはレーシングドライバーなわけであって、どんなに過酷な状況下のレースでも、常に変わることなくトップレベルのパフォーマンスを発揮するためには、他の一流スポーツ選手と同じようにそれ相応の準備が必要なんです。レーシングドライバーってアスリートなんですよ。
正しい方向に進める勇気、信じる強さ
プロフェッショナルとは?今後の目指す道とは何ですか?
結果を出す事、プロである以上当たり前のことですが、それがまずは最も大事な事です。結果を出していなければ発言力や影響力を持つ事が出来ませんから、たとえこの業界を良くしていきたい、こう変えていきたいと思っていたとしても、行動を起こす事すら叶いません。結果を出してこそ初めて自分の存在意義を見出せるのではないかと思います。また、その自分を見ている子供たちに夢を与えることができる存在でいつづけたいですね。サーキットに来てくれる子供たちは僕の事を目を輝かせながら見ています。彼らにとって自分の存在は、大げさではなく、まぎれもないヒーローになってるわけで、これってすでに子供たちに夢を与えてしまっているんです。夢を与えてしまっている存在である以上、彼らに対して責任が出てきますよね。彼らが成長してレーシングドライバーを目指し、はれてプロのレーシングドライバーになったときに「レーシングドライバーになって良かった」と心の底から思えるように、今この世界で生きている僕たちが彼らに対してしっかりとした土壌を用意しておいてあげる必要があると思っています。そのためにも、時に戸惑う事はあっても、正しい方向に進める勇気、信じる強さ。そういうものを持って突き進みたいですね。
厳しくも、かけがえのないもの
スピードの世界に生きる脇阪さんにとって、時間とは?
”時”は厳しいものですね。0.1秒で何十mも差がつく世界で戦っていますから、常日頃から”時”には敏感ですよ。あまり触れたくない事もたまにはあるけど、かけがえのない”時”を感じる事もまた事実。生きとし生けるものにとっては有限なものであり、しかし無限に続いていくものでもある…、不思議なものですよね。
モノ選びのこだわりはありますか?このモデルを選んだ理由は?
腕時計は自分をランクアップしてくれるアイテムですね。ファッションに関してはこれといってこだわりがないので、センスの良い仲間たちの意見を聞いたり、単純にカッコいいと思うモノを選んだりします。このモデルはフルブラックで、シックで落ち着きのある感じが好きですね。こう見えても普段はどちらかというと無口な方ですから(笑)。ダイアル内にたくさん針があって、リューズやプッシュボタンが3つあるクロノグラフのメカニカルなところがツボですね。
品名:クロノオフショア1 クロノオフショア プロフェッショナル
型番:01117-37N-NINRN
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脇阪 寿一 Profile
1991年にカートを初め、95年には全日本F3選手権に参戦し新人賞を獲得。翌96年には日本人として6年ぶりとなるチャンピオンを獲得。その後、98年にはF1ジョーダン無限ホンダテストドライバーを務める。帰国後フォーミュラ・ニッポン、全日本GT選手権(現SUPER GT)に参戦。02年には全日本GT選手権(現SUPER GT)にてシリーズチャンピオンを獲得。また06年にはSUPER GTにて、ドライバーズ&チームのダブルチャンピオンを獲得し、08年にはチームチャンピオン、そして09年には再びダブルチャンピオンを獲得した。SUPER GTにおけるタイトル獲得回数トップタイ。なお、トヨタ自動車レース部門の開発ドライバーも務め、“クルマの楽しさ・素晴らしさを多くの人に伝えたい”という強い思いから、精力的にプロモーション活動を行っている。
撮影協力:ストリーマーコーヒー
Photography: KARL (RR Inc.)