田口 頼

さまざまな業界で活躍するトップランナーたちに選ばれるエドックス。連載企画“エドックス ラヴァーズ”では、彼らが愛用するエドックスウォッチへの想いに触れながら、プロフェッショナルとしての仕事へのこだわりや貴重なエピソードを紹介します。

今回は、ボードの上に乗り、パドルを駆使して海の上を進むスタンドアップパドルボード競技において、日本屈指、いや世界屈指の選手として認められている田口 頼選手が登場。2023年からエドックスのアンバサダーに就任した弱冠22歳という若さの田口選手は、昨年デンマークのコペンハーゲンで開催されたISAの世界SUP&パドルボード選手権で見事3部門優勝し、同競技初の3冠を達成しました。
そんな田口さんは、今年本拠地をこれまでの沖縄から岡山へと変更。その狙いとは? そして3冠達成から現在までの変化、また今見据えている未来とは。愛用する『クロノオフショア1 クロノグラフ オートマティック』と共に、田口 頼選手の現在地を語っていただきます。

史上初の3冠達成を経て、さらなる飛躍を目指す

昨年は、ISAの世界SUP&パドルボード選手権で、テクニカル、チームリレー、スプリントで優勝し、3冠を達成することができました。ハイレベルな競合選手が出場する世界選手権での3冠は史上初とのことだったので、とてもうれしかったです。でも、同時にこれがゴールじゃないと気が引き締まる思いがしました。ここからさらに飛躍できるかが重要。むしろスタートだと思っています。

これからは、いわゆる追われる立場になるのでしょうが、僕はプレッシャーを感じにくいタイプなので(笑)、あくまで自分との戦いというスタンスです。3冠達成して1年経ちますが、その間に開催された大会もチャンピオンとして臨むというより、毎回大会ごとにタイトルをきっちり獲りにゆく、いわばチャレンジャーの気持ちでした。
トレーニングにおいても、毎回精度や強度を上げ続けています。まだまだ自分には伸び代がありますし、課題だって沢山あります。3冠を獲ったからといって、満足していられないです。常に前進あるのみですね。

思い切った行動力で業界の常識を変える

この1年の変化で一番大きいのが、拠点を沖縄から岡山に移したことです。
SUP業界としては異例という受け取られ方でした。海に囲まれた沖縄から内海の瀬戸内海に拠点を移すのは、確かに異例かもしれません。もちろん、沖縄という環境は素晴らしかったです。瀬戸内海は波がないですから。実際、国内外で活躍する日本人選手の多くが沖縄勢で、沖縄に拠点を置いてトレーニングすることが定石と思われています。
ただ、僕の持論だとSUP競技においてはテクニックも重要ですが、とどのつまりはパドルを漕ぐ力が最も重要なんです。漕ぐ力をつけることにおいては、瀬戸内海でも十分。特に最近の大会では、平水でのレースをいかに制覇することが重要という傾向にあり、瀬戸内海でのトレーニングはむしろ理想的です。

5km〜6kmを競う公式大会では1kmのアベレージが5分30秒を理想とされるのですが、これまでそのタイムを切った選手は世界でもまだいないんです。でも岡山でトレーニングしてから、それを達成することができました。業界最速のアベレージタイムを出したことで、とても驚かれました。これにより、国内でのトレーニング環境における常識を覆したといえます。トレーニング環境の選択肢が増えたことで、これからSUP競技を目指す方が増えてくれたら良いなと思っています。

環境をガラリと変えることで見えた新しい未来

岡山への移住には、もう一つの理由がありました。祖父はかつて海のそばで民宿を営んでいましたが、10年ほど前に休業していました。今年の4月、祖父が危篤となったことをきっかけに、祖父の残した民宿と家を守りたいという思いが強まり、私は岡山へ移住することを決意しました。迷いはまったくありませんでした。

8月にオープンしたばかりで、まだ改装なども含めて全面オープンではないのですが、既に友人や競技仲間などが利用してくれており、SUPトレーニングの合宿拠点としても活用いただいています。それからSUPギアの販売やスクールも開いており、着々と岡山にSUPを取り巻く新たな環境ができつつあります。SUP競技者は全国にいますが、皆がトレーニングのために沖縄に遠征できるわけではありません。岡山なら新幹線で来られますし、SUP競技者の新たなトレーニング拠点として馴染みの存在になれたらと思っています。
現在来ていただいている方にとっては、僕が世界選手権で活躍していることも理由になっていると思います。町や市などとの連携も色々と考えていますが、それも僕が世界に出続けているからこそ。皆さんに喜んでもらえる民宿経営を続けるためにも、僕はもっと頑張らなければと思っています。

好きなことを続けるために戦略的な決断を

海まで歩いて30秒という民宿経営は、SUP競技者にとって理想的です。SUPはここ数年で知名度を上げていますが、とはいえプロ競技としてはまだマイナースポーツです。国内の選手において競技だけで食べていける人は、ほんの一握りなんです。僕は以前からミリオンプレイヤーになりたいと公言しているのも、それによって日本のSUP競技人工やレベルをボトムアップしたいからです。

民宿経営は、セカンドキャリアなどを考えた結果でもあるんです。ありがたいことに現在はプロとしてSUP競技一本で食べてはいけるのですが、そのためには日々スポンサー探しに奔走する必要があります。長く続けるためには、そして選手として引退した後もSUP競技に関わり続けるためには、自分自身で完結できるお金の稼ぎ方も確保しておく必要があると思っていました。
それに、拠点を作った方が後進の育成にも便利ですから。いずれはここ岡山でイベントや大会を開けるようになりたいですし、現在既に具体的な構想を練っているところです。自分もまだ年齢的には若いですがSUP競技者としてはそれなりにキャリアを積んでいますし、それに後進を育てることは自分の成長にもつながります。

手元で示すトッププレイヤーとしての矜持

2023年度からエドックスのアンバサダーに就任させていただき、日々『クロノオフショア1 クロノグラフ オートマティック』を愛用させて頂いています。この腕時計は45mmとケースサイズが大きく目立つので、よく周囲の人に羨ましがられます(笑)。

ブランド物が好きというわけではないのですが、高級腕時計はずっと着けたいと思っていました。海外のトップ選手には大抵高級腕時計のスポンサーが付いていて、表彰台で着けている姿を見ては憧れていましたから。海外に遠征すると、やっぱり腕時計ってチェックされるんですよね。いい腕時計を着けていると、一目置かれるんです。プロ競技者として憧れられる存在になることはとても重要で、腕時計はその象徴といえるのではないでしょうか。
以前は『クロノオフショア1 クロノグラフ オートマティック サンセット スペシャルエディション』を着けていましたが、今は祖父が使っています。僕が着けているのを見て、「それいいな。オレもそんないい腕時計着けてみたいよ」って言うので(笑)

今着けている『クロノオフショア1 クロノグラフ オートマティック』は、パワーボートのレースから着想を得たモデルとあって、僕にぴったり。僕のプレースタイルは、ズバリ真っ向勝負。テクニックも使いますが、フィジカルの強さを全面に出してパワーで押し切るスタイルなので、まさしく『クロノオフショア1 クロノグラフ オートマティック』そのものですよね。

CHRONOFFSHORE-1
CHRONOGRAPH AUTOMATIC
クロノオフショア1
クロノグラフ オートマティック
Ref.01122-37RBU3-BUIR3-L

最高速度が時速200kmに達することから「海のF1」と呼ばれるパワーボートレース。その世界観と高度なスペックを腕時計に落とし込んだのが、クロノオフショア 1 コレクションです。
裏蓋にプロペラが刻印された強靭な316Lステンレスケースに、耐傷性に優れた高硬度のハイテクセレミックベゼル、そしてパワボートの船体でお馴染みのカーボンファイバーをダイヤルに使用するなど、屈強な作りが自慢。
特殊なケース構造とねじ込み式リューズ、そして自動ヘリウムエスケープバブルの組み合わせにより、500mもの防水性を実現している点にも注目です。
そんなプロスペックを備えながら、ゴールドPVD加工されたケースとあざやかなオーシャンブルーの組み合わせは、クロコダイルストラップも相まって、ラグジュアリーな雰囲気も楽しませてくれます。

スペック/
キャリバー:自動巻き(EDOX011 約46時間パワーリザーブ)、機能:時針・分針・秒針、クロノグラフ、日付、曜日、ケースサイズ:直径:45mm、厚さ:16.5mm、ケース素材:316LステンレススティールゴールドPVD、オートヘリウムエスケープバルブ、ダイヤル:フルカーボン、ベゼル:ハイテクセラミック(逆回転防止ベゼル)、防水:50気圧/500m、ガラス:サファイアクリスタル(無反射コーティング)、ストラップ:クロコダイル ※SUP時にはラバーに付け替え

Profile

田口 頼(プロSUPアスリート)

2003年、沖縄県生まれ。幼少期からSUPに親しみ、2023年には全日本SUP選手権大会で男子歴代最年少2冠を達成。2023年にはワールドツアーランキングでアジア勢トップの4位にランクイン。2024年にはISAの世界SUP&パドルボード選手権で3冠を達成。名実ともにSUPにおける世界のトッププレイヤーとして活躍を続ける。現在は拠点を沖縄から岡山に移し、選手としての活動とともに民宿経営やスクール運営など多岐に活動する。
https://www.oceanboy21.com/

Photography:Mitsuhiro Nomi
Text :Masafumi Yasuoka
Direction :P.K Suzuki