各界の第一線で活躍する著名人へのインタビューによる連載コラム“エドックス ラヴァーズ”。プロフェッショナルな仕事へのこだわりや、彼らの愛用ウォッチなどに迫ります。今月は、試合を左右するキーマンとして20年間元巨人軍の走塁のスペシャリストとして活躍し、代走での通算盗塁数の日本記録保持者でもある、元プロ野球選手でスポーツコメンテーターの鈴木尚広氏です。

野球と共に歩んだ青春時代

プロ野球選手になられたきっかけは何ですか?

5歳から少年野球を始めました。福島で肉屋を45年営む父は野球好きで、息子が生まれたら野球をさせたいと心に決めていたそうです。そんな父の影響を受けて、プロ野球中継もよく見ていたのでプロへの憧れはありましたが、まさかなれるとは思っていませんでした。ただもっと上手くなりたい、その一心で野球する日々でした。高校2年生の時、スカウトの方が地元福島に来るようになって、非現実だったプロへの道が現実味を帯びてきました。福島の県立高校になぜ?とすごく不思議な気持ちでしたね。

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弱さが強さに変わる

スカウトマンが注目する選手だったのに謙虚ですね?

自信がなかったですから。自信がないからこそ、毎日やり続けて、成長できたんです。弱さが強さに変わる。現状に満足していては成長を止め、慢心は隙を生みます。僕は、自分に足りないものは何か、補えることはないか、いつも自分にダメだししながらトレーニングしていました。自分の弱さに向き合うことは、成長するための必要な条件だと思います。

失敗から得たもの

僕は1年目で3回も骨折して、チーム内で「骨折くん」なんて呼ばれていました。そんな僕がここまでこれるなんて、周囲の誰も想像しなかったはずです。その後、怪我をしない体作りに取り組んで怪我をしなくなりました。マイナスをプラスに変えればいい。もちろん失敗すればへこたれることもありますけど、失敗を重ねることでしか経験や自信は生まれないですから。

万全の準備で挑む

結果を出すために必要なこと、最も大事にしていたことは何ですか?

準備です。準備なくして成功なしです。僕の仕事は一発勝負でしたから、限られた出番の中で結果を出さないといけなかった。悔いだけは残したくなかったんです。答えはひとつじゃないから、力を発揮し期待に応えるために自分のやれることは“すべて”やります。その上での失敗なら、人のせいにすることなく自分の責任で経験として学べるものです。

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積み重ねた努力は裏切らない

試合開始7時間前に球場入りすることでも有名でしたが、その積み重ねが日本記録を?

どのスポーツもそうだと思いますが、この世界、センスだけでは通用しません。自分と向き合って努力することは“必然”でした。1から瞬間瞬間で積み上げたものは、一気に落ちることはありません。これほどリスクのないことはないんです。僕は決して天才ではない、努力派・慎重派です。目の前にある“やるべきこと”をずっとコツコツやり続けて積み重ねていたら、幸運にも結果がついてきただけです。

常に挑み続ける理由は?

安定は嫌いです。なぜなら成長がないから。チャレンジは経験になります。自分を変えたいと望むこと、行動を起こすこと、そして“やり続けること”が大事だと思っています。人生終えるまで現状に満足しないかもしれません(笑)。

心をコントロールする

普段意識していることはありますか?

穏やかでいることです。自分のパフォーマンスを最大限発揮するために、心をコントロールするのは大事です。淡々と、冷静に、自分の精神を安定させること。一喜一憂していると、勝負の世界では“隙”になりますから。試合中はもちろん、監督や仲間に不安を与えないためにも、ベンチでもポーカーフェイスで表情を変えませんでしたね。

これからも続く挑戦

今後はどのような活動を?

自分の経験から人に何かを伝えたいですね。技術もですが、どのスポーツもメンタルが重要です。相手を見つめながら、お手伝いすることで今まで支えてくれたファンの方々や多くの方に還元していけたら。SNSを日々発信しているのもそんな思いからです。先入観に囚われず、自分にやれることをまずやってみて、可能性を切り広げていきたいです。


鈴木尚広
Profile

福島県出身。元読売ジャイアンツ 背番号12。1996年ドラフトで読売ジャイアンツから4位指名で入団。常勝軍団の中で自らの強みを活かして、一軍でのポジションを確立、20年間生きぬいた。2008年にはゴールデングラブ賞や日本シリーズ優秀選手賞を受賞。試合を左右するキーマンとして、数度の優勝に貢献。228盗塁を成功し、通算盗塁成功率も82.9%と日本プロ野球記録を樹立。長野久義など彼を慕う若手は多い。著書に「失敗する事は考えない走る!盗塁哲学」(実業之日本社) 「Be Ready~準備は自分を裏切らない~」(扶桑社)

https://suzukitakahiro.com/
Photography: Yoshinori Eto
Special Thanks: Nobuhiro Tahara